ZOO/乙一

ZOO

ZOO

一番最初に「落ちる飛行機の中で」を読んだので、この小説は結構笑える系?と思ったら次に「SEVENS ROOM」でかなーり重い話でびっくり。笑える系では「落ちる飛行機の中で」と「血液を探せ!」があるけど、後者は完全に笑いを取りにいってます!って気がしてあまり好きじゃなかった。
「落ちる飛行機の中で」は良かったな。哀しい話でもあるのに淡々としてる小説の空気も好きだし。笑いも入ってて、でもラストではちょっと青春っぽい感じもあって。
あと印象に残ったのは「カザリとヨーコ」。タイトルだけみるとどういう話なのかよくわかんないし、「カザリ」は「飾り」だと思ってたから可愛い話なんかなーと思って読んだら重かった。最初の一行からすでに痛くて哀しい。カザリもいい人かと思いきやあんなんだし、救ってくれるかと思ったスズキさんも救ってくれることはないし。でもラストがかなりいい。カザリやお母さんの結末もすかっとするし、何より前向きなヨーコが格好良い。「よっしゃー!」がいい。
「SEVENS ROOM」は結構好評みたいだね。なんかもうこの話はやりきれない話だ。理不尽だしなあ…。
あとは何より「ZOO」だ。「SEVENS ROOM」の方がいいという意見もあるようだが、この「ZOO」は私にとっては衝撃的な話。主人公と同じ状況に立ってるわけじゃないけどなんか気持ちがわかる。ああしていれば自分は被害者なのだし、そこから抜け出すのはかなり勇気がいるんだろうな。途中までは決意してきたのに、その決意が揺らぐ瞬間って私でもよくあるし、理解できる。ラストで、その決意が揺らぐ瞬間のきっかけであったものが→崩壊←するのだけど、その時の主人公の中にあるものが衝撃であり、そしてそれ以上に安堵である、っていうのがなんとも言えない気分にさせられる。


全体を通してやっぱり乙一の発想力には圧巻だし、どの小説にも「哀しさ」が漂っていて胸がしめつけられる。あと、結末が一気に絶望だったりする小説もあって、がーんと来る。もちろんラストで希望がちらっと見えるような小説も多いのだけど。そんな小説の中でひたむきで優しかったり、絶望を受け止めようとするキャラクター達もまた良い。
やっぱりこの乙一って人すごい。

「私は…この子が、意外と好きだったんです」