プリズンホテル/浅田次郎

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

夏から全4巻。

新堂冬樹期間だったのが急遽浅田次郎期間突入したのは、たまたま手にしたこの本がきっかけでした。前から浅田次郎は知っていたけど、読んだのは「民子」(猫のフォトブック)だけで、でもなんか読みたい本もなくってぶらぶらしてたら、浅田次郎があってそういやこの人しってるや、と思って読み始めたのでした。


この人の作品の素晴らしいところは、脇役全てが個性的で必然性があって魅力的なところ。作家、ヤクザのおじさん、有名店からやってきた支配人とシェフ、天才板前、仲居作家の恋人にその娘と父親、作家の母と現在の夫、育ての親、支配人の息子、編集者…。4巻あるのでなかなか語りつくせないが、話が進むにつれ作家と母の関係や作家と育ての母の関係、作家と恋人の関係が徐々に変化していって、最後の最後に大団円を迎える感動!!なんか話がひとつに集約されて最後にぎゅっとした感じ。
特に好きなのは作家の育ての母である富江の話。富江はもともと木戸家で女工として働いていたんだけど、あるとき母親が蒸発し、それ以降は小さい考之介を育てるため母親の代わりを務め、やがて父親と結婚する。考之介はずっとそれを「富江は母のせいで仕方なく結婚した」って思ってきたんだけど…うーん全部言えないのがもどかしい。珍しく怒って富江が考之介に、父からの手紙を見せるところがむちゃくちゃ泣ける。あとおさげを切るシーンも印象的だ。


考之介のことは最初すぐ殴ったりしてなんだこいつとか思ってたしこれをDV小説だ!児童虐待だ!とか言って批判する人がいるんだが、まあそうだろうし、実際お清なんて殺されかかってるんだけどそれが愛情表現で、周りの人もそれを分かって受け入れてるし、この場合そこで怒って読まないとか駄作だとか言ってると損する気がしますよ。