鏡姉妹の飛ぶ教室/佐藤友哉

鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)

鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)

※全体的に微妙なネタバレがあります。(確信部分は反転させてます)


今回の主人公は鏡家の三女、佐奈。なんつーか、佐藤友哉の書く女の子は可愛い。佐奈もごくごく普通の女の子。他の子が斜め掛け鞄をかけてるのを見て、胸の膨らみ強調しちゃってさ、とか思ったり、「誰か萌えて下さいよ」とか言ってるの、普通に可愛い。今回の話は土の中に埋まってしまった学校から生き残った生徒が抜け出すまでのストーリー。
物語のオチで佐奈も言ってるけど→夢 オ チじゃなくてすげー良かった。←万が一そうだったらキレるとこでした。ってことはあの佐奈の記憶もこの佐奈は持ってるってことになるのかな。


いろいろぐっと来る場面はある。力の差を見せ付けられながらも、本気を出せばなんだってできると信じるひたむきな宇沙里ちゃん、初めてハッキリとした意思を見せる唯香と、姉に拒まれて自分を見失う浩之(だから番外編)、普通に生きたい、と願う健気な兵藤くん、


そして、いつも「できるもんか」と思って生きてきた村木。


そんなことできるもんか、自分の夢なんて叶えられるもんか、自分の手で何かを起こすなんてできるもんか、そうやって生きてきた少年が、このぐちゃぐちゃになった学校で初めて自らの手で行動を起こす。だけど、現実は甘くない。彼が行動しても事態は動かない。それでも彼は自分で行動して動いたということに対して、今までの自分から抜け出していく。


なんて、なんて前向きな話!
今時「頑張ればできないことなんて何もない」なんて青臭い台詞、なかなか書けるものではありません。しかし、こうさらりと書いてしまうあたり、いいなあって思う。それが単なる綺麗事で終わるのでなく、本人が絶体絶命の時にそれを言うから良いのだ。


こういうちょっと青臭いかもしれないけど前向きな小説、私は好きだ。ってか佐藤友哉、好きすぎ。



「まだだ…まだ諦めていないぞ」
「ほ…本気になれば何だってできるのだ。本気を出せばなんだって可能なのだ。私は…そう信じて生きてきた。それを今さら変えるものか。私は諦めない!」