千原ジュニアと「アイツ」

前回の「にけつッ!!」において、ジュニアが話していたことがちょっと良かったので書いてみることにしました。


コバが学生時代の同級生と会ったという話が終わったときのこと。
「そうやって仲いい軍団が集まって…みたいの、すごいええよなあ」、とジュニアが言い出したのです。ご存知の通りジュニアは中学に入ってから引きこもりになり、そのままNSCに入ってしまったので、本人曰く「多感な時期を吉本に捧げ」てしまっており、学生時代の友達というものがいないのですが、中学で1人だけよく喋る友達がいたらしいのです。

ジュニア 唯一学校で1人だけ喋るやつがいて、それが「14歳」っていう小説の中で「アイツ」っていう名称で書いてるんですけど。もう俺すごい学校で気持ち悪がられてたから…。
ケンコバ ……顔?
ジュニア も、含め(笑)
ケンコバ 存在から何から。なんでアイツ学校来ぇへんねや、みたいな。
ジュニア とか。たまにきたらケンカしたりとか、誰とも喋れへんし。気持ち悪いあいつ、って。すごい気持ち悪がられてたんです。でもそいつは、全然普通に喋ってくるんです。不思議なヤツやな、と思ってて。


ジュニアの小説「14歳」で「アイツ」はたまにしか学校に来ないジュニアにも全然普通の態度で接したり、ケンカしてるジュニアを見て周りが気持ち悪いと思う中「面白い」と言ったり、少し変わった少年だったようで、久々にジュニアが学校に来た日の様子はこのように書かれています。(抜粋)

この学校に入ったばかりの頃、何回か自転車で一緒に帰ったことがある。当然そんなヤツはこの学校の中でコイツ1人だけだ。僕はあの頃と何も変わらず声をかけてきたコイツに、少しだけ驚きながら、一緒に自転車置き場に向かった。


自転車をこぎながら、今までなんの約束もしたことがないけれど、もしかしたらアイツと僕は友達なのかな、と思った。友達?いつも寝ていて、あまりしゃべらず、ちっとも中学生らしくなくて、ものすごく不思議なアイツ。アイツの存在が、僕の中で少し大きくなったのが解った。


僕が階段を下りようとすると、ソイツは足を止め僕に行き先を訊いた。家に帰ると言うとソイツは、
「じゃ、また明日」
と言った。それが僕とコイツが交わした初めての約束だった。
僕は何年かぶりに友達と約束を交わした。
友達と。

ちなみにドラマでは確か「大ちゃん」という名前がついていた筈。
さて「にけつッ!!」の話に戻ります。

ジュニア こないだおかんから電話かかってきて、そいつの妹さんがうちの実家に来たと。そいつが結婚するんで、もしよかったら、祝電を打ってもらえませんかっていうお願いを、妹さんが、「お兄ちゃんにサプライズでやりたいんです」って言いにきはったって。そんなもん祝電と言わず、V(VTR)撮って送るよって、ほんで俺V撮って。おめでとうって言うて。
…20年前ですからね、会うたのは。そっから一回も会ってないですから。それ送ったんです。
ほんならおかんから電話かかってきて。家にわざわざ御礼をしに、そいつが、来はったと。ほんで電話番号教えといたから、かかってくると思うわって。
で、かかってきたんすよ。20年ぶりに!俺ちょっと緊張してもうて。どうしよどうしよ思って。…あ、切れてもうた、みたいな。
ほんでもう1回かかってきたから、もしもし?っつったら向こうは、俺は20年ぶりやけど…向こうは見てくれてんのやろな。何もないねん、その頃のままやねん。
「おー俺今度東京行くからちょ飯いこうや!」
「お、おう…もちろんやがな…」

ジュニアはそう言うけど、きっと「アイツ」はジュニアをテレビで見てたからそんな感じだったんじゃなく、その頃のままだったんだろうなあ。
ジュニアと「アイツ」がした20年ぶりの約束。なんだかいいですよね。



14歳 (MouRa)

14歳 (MouRa)