灰色のダイエットコカコーラ/佐藤友哉

灰色のダイエットコカコーラ

灰色のダイエットコカコーラ

以前乙一っぽいなあとか西尾維新ぽいなあとかいう小説があったりしたりしたんですが
今回のこれは舞城王太郎っぽいなあと思いました。
パクったとかそういうんじゃなくてテイスト?割と影響されやすい人なのかしら。
特に…なかなかのグロ展開と、ハサミちゃんっていうネーミング、
放火した家を×で記していくと…とかも。




話の内容も語り口も、個人的にはあんまり好きじゃない。
この「僕」の自分は特別なんだ、他の人はただの肉のカタマリなんだ、っていう選民意識というか、そういう部分が若いなあって感じで痛々しくて、なんだか自分の過去のやっちゃった出来事を一人で思い出したりしました。
でも結局自分も普通の人間だったり、今にみとけと言いながら動かなかったり、なんだか楽で楽しいほうに流されてしまったりする感じも若い。実際この話は佐藤友哉が「自分の10代の頃」を投影して書いたようなんだが。
っていうか、そういう部分を感じるからこそ尚更この小説が痛々しくて苦手なんだと思う。語り口も、言うだけで行動しないだらだらした感じが表れてるし。
展開もそこまで大きな山はないので、ちょっとだけだれそうになります。




結末は、なんだか冒頭からは予想できない感じで終わりますが、
私はこの人が書く結末がいつも好きです。
本読んでてオチでがっかりすること結構あるんですが、
私の中で(あくまで私の中で)佐藤友哉はオチをはずしたことがない。
案外幸せーな気分なれるの多いんだよな。もちろん「慾望」みたいのとかもありますけど。
今回もなんだかんだ言って前向きなラストな感じで良かった気がします。




しかし人には勧めづらい。
一瞬吉川さんにうっかり勧めてしまい、大変申し訳ないことをしました。